ウルフの経営 先鋭者インタビュー 藤川豊文氏 vol.3

家業である有限会社藤川工務店を継承しながら、地域資源を活かす合同会社の運営を先導する、藤川豊文代表。前回のインタビューに引き続き第3弾では、前回のインタビューに続き最終回では「藤川社長が視察を受け入れる理由」「持続的経営に向けた利益の循環」「藤川社長にとっての”ウルフの夢”」この3つについてお話をお聞きしました。

 

 

 

 

(有)藤川工務店 代表取締役。2010年に、一次産業者と連携し、地域資源を活用する為にばうむ合同会社を起業、自然と共存できる町づくりを理念に、木材・農産品の製造・販売を展開。林業者と連携した6次産業化ビジネスを立上げ中。

 

 

 

藤川社長が人前で話されたり、積極的に視察を受け入れる理由は何ですか?

 

藤川社長:

まず、思うのが、自分達がやっていることは、日本経済の全体で見たら、極めてマイノリティだということです。少数派だけで囲っていても発展しないので、同じような考え方の人同士で高め合って、日本経済における地域のシェアを増やしたいと思っています。だから、自分達だけで“のし上がりたい”という理屈ではなく、小さく初めて仲間を増やしたい。また、地方で始めた小さなビジネスが、大手企業に模倣されるのを嫌がる人もいますが、むしろ大手企業に企画や商品を真似してもらえれば、大手企業の資本でマイノリティだった元々の私たちの活動をPRしてくれるので、ラッキー!くらいの感覚です。マイノリティがマジョリティとして集まってシェアを伸ばし、大手の波がきてまた更なるシェアが増える。、しかし、そのときは、また次に大手企業には手が行き届かない、中小企業ならではのマイノリティ市場を作っていけばいいのです。だから、まずは認知も低い地域ビジネスであれば、まずはマイノリティ同士で情報を寄せ合って、お互いの成長のために良い報告をし合えたら良いなと思っています。視察の際の情報公開というより、やはり、お互いに真似しあい、動いたからこその学び、失敗等から学ぶことのほうが重要なことと考えています。

 

先日も、私たちの地域に視察に来られましたが、自分の情報を隠しているうちは、相手も腹を割って話してくれない。実際に会って話して「この人なら」と思えば情報交換することは大切にしたいですね。そこは、会ってみて意気投合しないと分からないところです。特に、若い人が、自分の意思を持った意見を持ってきた時は、聞く姿勢にまわります。自分自身もかつて、お世話になった先輩方が沢山いて、その人たちが私のような若輩者の意見に耳を傾けてくれたように、私も若い人の意見を聞いていきたいと考えています。
 

もちろん意見を言い合って一致しない時もあります。それは世代ギャップではなく、一致しないことはしない。しかし、「自分はこうしきたい!」とハッキリとした持論を持っている人は、考え方が異なっていても意気投合しますよね。

 

そもそも、いつの時代も「アンチ」とか「ディスる」とか批判を受ける立場はありますが、いずれにしても批判しようと、相手の言葉に耳を澄ましているということは、彼らの存在も、無関心というわけではなく、実は同志であるわけです。ただし伝えておかねばならないことがあり、その考えには同意できないと分かった時でも、ずっと相手の考えが気になるし、「あぁ、そういうことだったか。」と後からわかるのも人生の妙です。当時は、何か違う!と思っていたものが、何年か先には、意見が重なる瞬間があったりするのも、年齢関わらず、人間同士で交流する面白さなのかもしれません。

 

いつも地域内外から新しいインターン生、社員が集まっている印象の御社ですが、持続的な経営に向けた、社員育成や利益の循環についてお聞かせください。

 

 

藤川社長:

自分が地域でやりたいことはいつも明確にしています。そして、そのためには人が必要となります。高知の嶺北地域での地域づくりに対して常に、10個、20個とやりたいことはあるので、いつも人待ちの状態です(笑)。なので、外からやってきてくれた人のやりたいことと私がやりたいこととが一致すれば、実現へ走り出せる状態を常に保っています。もちろん、私が横浜での仕事から本山町に戻って来て7年目の、平成15年に商工会の青年部から木工部を立ち上げた時のように、地域内の人同士で新しいビジネスを立ち上げる場合もあります。しかしながら、40年、50年と本山町に住んできた人に対して、新しい6次産業化の考え方は押し付けになってしまう場合もあります。数十年間継続してきたライフワークの在り方を1~2年で変えてもらうのはとても難しいことです。ならば、“そんな暮らしをしたい!”と共感して地域外から移住してきた人に提案する方が、スムーズに事が進む場合も多いですね。「こんなことを始めよう」と考えが一致した移住者に対して、彼らが動きやすいようにインフラを整備するのが、私たちの役割です。理念を発信し、環境を整備し、きっかけを提供すれば、結果的に「山を大事にする」という自分の理念が叶う活動が徐々に増えて、人が集まってきました。

 

例えば公的な予算を取って、お金を掛ければ人を呼ぶことは可能です。しかしながら、お金ありきで始めればその分のリスクも高い。同じ理念を持った人が集まった後に始めた方がスタートを切りやすいと実感しています。これまでお金の苦労がゼロだった訳ではないですが、基本的に楽天家なので「金は天下の回り物」が信念というくらいに考えています。使い方さえ間違えなければ、投じたお金は確実に戻ってくる。本業の収益に直結しないことでも、何か地域にとって求められる仕事に応じていたら、結果的に他の頼み事ももらえるように動いてきました。

 

持続可能な経営といえば、財務のこととなりますが、会社経営の全体を担う代表取締役の役割は、平成18年に先代(父親)から継承しました。しかし、会社の財務・経理は現在もずっと先代の父が継続してくれています。「こう使いたい、こんなことがしたい」と言って父が一言も発しないときは、そのまま突き進んでOKな時。「やってもいいけどなぁ」の一言が付いてくる時は、どうも止めておいた方が良い時。守備を支えてくれているので、いかにして“使うか”が私の仕事です。金銭的な心配を自分にさせないことが、父親の信念。先代を始め、自分は周りのスタッフが常々サポート役を務めてくれているので、やりたい方向へ進みやすかったことがとても恵まれていると思っています。

 

 

これまでのインタビューを通じて、理念の旗の掲げ方や、人の集め方など、地域でチームができるストーリーをお聞かせいただきました。最後に、藤川社長にとっての「ウルフの夢」をお聞かせください。

 

 

藤川社長:

肝心なのは、貫き通す覚悟を持つことです。地域ビジョンを掲げるならば、自分が何をやりたいか明言し、先導し、それは良い未来にしか繋がらないと思うので、信じて貫き通すこと。インターネットは確実に活かしていかなければならないので、ネット社会とリアルの融合の視点は欠かせません。変革を続けて自分達がマイノリティからマジョリティになったら、やめるかもしれませんね(笑)。但し、マイノリティ精神であることは変わらないので、その精神を次の世代に繋げるためにも、変革を目指し続けるでしょうね。ずっと課題に対してもがくことが、日本社会全体の活性化に繋げるので、もがくことを楽しめる人間を増やしたいですね。

 

自分が子供たちに託す財産としては、課題を自分で発見する精神を持つこと。人間は強欲やき、かつて目指していた到達点まで来ても、「これは違う!」と次の課題を発見します。そんな人が居なくなったら面白くない社会になるでしょう。

 

課題の継承といえば林業こそ。林業とは三世代後に商品ができる産業です。一代目が「これは将来金になる!」と信じて植えた木も、収穫期を迎えた頃には、市場が変わっている。よって、世代ごとに課題に直面することが不可避な事業でもあります。それが林業の難しさとして語られることもあります。しかしながら、世代ごとに「託された資源をどう売るか」と課題に対峙し解決して続ける産業は、自らに課題を発見し解決する人間、この精神性を育てる面白さを含んでいます。「課題を残してあげることが、私たちの課題である。」まさにマイノリティ精神で立ち向かう産業です。そうやって人を育てる産業と思うと、夢や誇りを持てますよね。

 

 

 

「林業とは、課題を見つけ、解決する人間を育てる産業」「課題を自分で発見する精神こそ、自分達が次の世代へ託すもの」と、山の時間軸を知る経営者ならではの言葉をいただいたインタビューとなりました。情熱を抱き、より良い社会・地域を目指すことは「人同士の交流」から育まれるということ。それは、どの時代も普遍なものではないでしょうか。事業や地域企業の理念について熱い想いを持つ藤川社長ですが、地域で盛んなドッジボールチームの監督をやったり、ソフトボールチームのサポートをしたりと、地域のお父さんとしてのお仕事も一通り務めてこられた一面もあるのです。田口さんにとっての歌舞伎のように、地元発で有志が集まるきっかけは、商工会に限らず、普段の地域行事やスポーツの中にもあったりするのかもしれませんね。

 

さて、ウルフの経営キックオフフォーラム(5/18)では、行政、自然資源、政治、森林認証、中小企業経営と各分野から専門家が情熱とそれぞれの見解を寄せ合ってディスカッションを行います。林業・木材業の関係者はもとより、山林所有をされている異業界の地域の名士、民間サポートを主眼に動く熱き行政関係者の方々は、お見逃しなく!

 

 

 

 

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