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ウルフの経営 先鋭者インタビュー 藤川豊文氏 vol.2

家業である有限会社藤川工務店を継承しながら、地域資源を活かす合同会社の運営を先導する、藤川豊文代表。前回のインタビューに引き続き第2弾では、「自社の事業から始まった地域への波及効果」「サービスを提供する上で大切にしていること」「地域企業が掲げる経営理念」この3つについてお話をお聞きしました。

 

(有)藤川工務店 代表取締役。2010年に、一次産業者と連携し、地域資源を活用する為にばうむ合同会社を起業、自然と共存できる町づくりを理念に、木材・農産品の製造・販売を展開。林業者と連携した6次産業化ビジネスを立上げ中。

 

自社の事業から始まった、地域への波及効果はありましたか?

藤川社長:

ばうむ合同会社を立ち上げたことによって感じる波及効果は、ありました。

ばうむ合同会社では経営理念として、 「ば」:万物に感謝し、自然と人の調和によって恵みが生まれる 「う」:美しい山間の町からみんなの笑顔がこぼれるように 「む」:無限の可能性に挑戦する

そして行動の原点として、「変化に期待するのではなく己の力で未来を拓くこと」という言葉を掲げています。自然や地域の恵みに感謝し”お陰様”の気持ち持った人が集まるように理念の旗を掲げてばうむを設立したのが、平成22年。その頃、例えば本山町のお米がグランプリ日本一に選出されたように、林業だけでなく農業分野でも元気なチームが出来て、同時多発的に町が元気になっていきました。

きっと町の全体的な雰囲気として、タイミングが重なったのでしょう。もちろん、自分達が理念を掲げたことが始まりの全てとは言いません。しかしながら、自分達がどんな理念を掲げてどのように事業を行っているか発信していくことで、農業など近しい事業を行う人たちとも、今まで以上に情報交換をしたり、地域を盛り上げよう!と意気投合したり、町全体として元気になっていった雰囲気がありましたね。

 

そんな地域資源を活かした事業を行うばうむ合同会社の皆さんですが、サービスを提供する上で、大切にしていることを教えてください。

藤川社長:

ばうむがモノづくりにおいて重視していることは、「消費者意識」です。作り手になるとつい熱が入って、消費者意識を後回しにしている時がありますが、皆がモノを購入し、消費者の一員です。必ず「自分達がお金を出してでも買いたい商品を作ろう」と言い合っています。

どんなに素晴らしい理念やストーリーを掲げていても、美味しくなければ、可愛く、格好良くなければお客様は買ってくれません。たまたま一回購入してもらえても、2回目、3回目また買って下さるリピーターには繋がりません。①品質、②納期、③在庫、この3つの管理を安定させることは、他の事業と同じく地域ビジネスにおいても欠かせません。ストーリーだけではブランドにならないし、リピーターは付きません。

まだまだ、ばうむも品質向上、納期対応力の改善、在庫のジャストインタイムの管理等、課題は多くありますが、常に消費者視点で、消費者に愛される商品を展開していきたいと思います。 ばうむを象徴する商品の一つに、間伐材を加工した「もくレース」という木工品がありますが、これもばうむの女性社員が「私、こんな商品が欲しい、作りたい」と声を上げたことから始まりました。彼女が欲しいと思うデザインを書いてもらい、プロダクトが生まれましたし、販売に当たっては、その女性が普段買い物へ行くお店をリストアップして、販売戦略を決めました。

女性社員の声から、もくレースが誕生したように、消費者意識を持って、自分が欲しいと思うものを作ること。あるいは、このターゲット層なら、こんなものを作り、このお店に置いて、こんなライフスタイルと一緒に提案したら欲しい!と思ってくれるだろうとターゲットを定めることを、モノづくりに携わる者として大切にしています。 

 

地域企業として理念を掲げることで、影響はありましたか?

藤川社長:

作り手が理念を繰り返し話していると、地域外から「自分もここでモノづくりをしたい」と言って人が集まるようになりました。ばうむには先日から新たに、神奈川県川崎市出身の若者がインターンへ来ています。彼は都会で8年間、プログラミングの仕事に従事していた技術者。私から見れば、彼もモノづくりに携わってきた一員と思いますが、彼自身は「自分の作っているモノの実像が見えない。モノづくりをしている実感を得られない」と違和感を抱いて、木工をしたいと気持ちが変化したようです。会社を辞めて2年間木工専門学校に通い、ばうむを知って、インターンへやって来ました。

これからの時代、田舎で事業をするにしてもインターネットの力は欠かせません。積極的にインターネットの影響力も取り入れていきたいと考えています。そして同時に、インターネット社会が広がるほど、目に見えるリアルの世界の価値も高まると感じています。そのような時、地域でモノづくりに取組む企業が旗を掲げていると、外からも「この地域で暮らしながら、形あるモノづくりがしたい」といった彼のように、人が集まってくると思います。

また、行政の施策である地域おこし協力隊員という移住者(チャレンジャー)がいますが、例えば林業選任で本山町に移住された若い人達と、地域の未来を語らい、事業構想についてディスカッションしたりしながら、独自の小さな6次産業化として事業連携をしたりできるようになりました。また、木工などで小さな加工作業が増えると、手作業のパート(アルバイト)の仕事も増え、主婦や学生などの集まる場にもなります。正社員という枠組みだけでなく、地域で色々なカタチの雇用が生まれて来るというのもありますね。

いずれにしろ、やりたい理念、地域の事業構想、自分の軸をしっかりもって動いていると、人的交流の機会、ビジネスチャンス等、行政からの提案と支援等、いい流れが訪れることでしょうね。理念を掲げて、モノづくりに挑む商工業者が集っていると、次第に行政が協力してくれるようにもなりました。どんなビジョンを掲げて、何に取組んでいるか明確にメッセージを伝え続けることで、”どんなサポートを求めているか”を理解してもらえるようになったのだと思います。

例えばIターンをスムーズに迎えるための事業など、色々と行政サイドから事業を提案して下さるようになりました。これは、「行政が何もしてくれないから儲からない!」と嘆いていた頃と逆方向のムーブメントですね。

地域の持続的発展において、民間と行政の協力関係は欠かせません。しかしながら、最初から行政サポートへの依存ありきの事業は、自立し得ないという考え方は、ばうむの立上げを通じて改めて実感するところですね。

 

現在、ほぼ全国の百貨店で取り扱われている商品の「もくレース」も、“こんな雑貨が欲しい!”と一人のスタッフの声から始まったのですね。自発的なアイデアを形にされているチームにおいて、利益の循環や、意欲のあるチームづくりはどのように取り組んでおられるのでしょうか?次回のインタビューで引き続き、お話をお聞きして参ります。


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